続・映画の王様

映画ライターのブログ

『きみへの距離、1万キロ』

ユージン・ターナー
うなじの匂いをかぎ、キスをし、愛撫すれば分かる



 原題は「Eye on Juliet」。つまり「ロミオとジュリエット」のような、運命の相手との障害のある恋を描いていることを暗示しているのだが、この邦題では…。

 米デトロイトに暮らす孤独な青年ゴードン(ジョー・コール)は、ロボットを遠隔操作して北アフリカの砂漠にある石油パイプラインを監視する仕事をしている。ある日、ゴードンはモニターに映った訳ありの若い女性アユーシャ(リナ・エル・アラビ)に心を奪われ、やがて彼女の姿を追うことが生きがいになっていく。

 中盤、ゴードンが、やはりモニターを通じて知り合った迷子になった盲目の老人に「運命の相手だと知る方法は?」とたずねると、老人が「うなじの匂いをかぎ、キスをし、愛撫すれば分かる。それで違うと感じたらやめることだ」と答える印象的なシーンがある。相手に思いが届かない、触れることもできないというゴードンにとっては反意的とも思えるこの言葉が、実はラストシーンで反芻されるのがこの映画のミソだ。

 また、この映画の設定は、無人戦闘機ドローンにより、戦地に行かずして空爆を行う様子を描いた『ドローン・オブ・ウォー』(14)と似ており、怖さを感じるところもある。加えて、昔の映画では、恋する人の姿を黙って追うのは純愛の証として描けたが、今ではストーカー行為と思われてしまう難しさがある。

 ところが、この映画はカニのように動くロボットを仲介させることで、怖さや不気味さを緩和させ、ファンタジー色を強めることに成功している。このあたり、カナダ出身のキム・グエン監督の手腕を買いたい気もするが、アユーシャの行動がわがままに見えてしまうのが難点だ。

 ゴードンの上司の名はピーター。これは歌手の「ピーター&ゴードン」にあやかっているのだろうか。