『海辺の映画館 キネマの玉手箱』

尾道の海辺にある映画館「瀬戸内キネマ」が閉館の時を迎えた。最終日のオールナイト興行「日本の戦争映画大特集」を見ていた3人の若者は、突如発生した稲妻の閃光に包まれ、スクリーンの世界の中に入り込んでしまう。
大林宣彦監督が20年ぶりに故郷・尾道で撮影し、サイレント、トーキー、アクション、ミュージカルと、さまざまな映画表現で戦争の歴史をたどっていく。前作『花筐 HANAGATAMI』(17)の檀一雄に替わって、今回は中原中也の詩を盛んに引用しながら、自身の戦争への思いをさらに強く押し出している。
オープニングタイトルに「映像純文学の試み」と出る。つまり、これは脱大衆の芸術作品であり、壮大な“私映画”であることを宣言しているのだ。
そして、前作同様、約3時間の間、ひたすらストーリーを無視した、何でもありの映像のコラージュを見せられる。だが、時にはあきれ、辟易させられ、気恥ずかしさすら覚え、これは死期の迫った老人の幻想なのでは、と思いながらも、つい見てしまうところも前作同様。そこには、狂気すら感じさせるパワーがあるし、時折、はっとさせられる場面もあるからだ。
舞台は、久しぶりの尾道。過去の大林映画に出ていたさまざまな顔が現れる。まるで大林監督自身が企画し、所縁の者に長い遺言を代読させた“生前葬”のような感じがした。
『花筐 HANAGATAMI』
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