続・映画の王様

映画ライターのブログです

『華麗なる週末』

ユージン・ターナー

『華麗なる週末』(69)(1980.11.10.月曜ロードショー)(2014.2.12.フィルムセンター)



 この映画は、スティーブ・マックィーンの出演作の中では異色作となるだろう。お得意のアクションシーンはほとんどなく、主人公の少年ルーカス(ミッチ・ボーゲル)を大人の世界へといざなう、ちょっと悪くて愉快な使用人のブーンという男を演じているからだ。


 そして、いつものハードな作品内にもちらっと見られる茶目っ気が、この映画ではふんだんに発揮され(特に、新車の黄色いウィントンフライヤーを初めて見た時の表情がいい)、彼の意外な一面を見る思いがした。


 ウィリアム・フォークナーの『自動車泥棒』を原作とするこの映画は、米開拓末期のミシシッピ周辺を舞台に、大人になったルーカスの回想という形で進行するハートウォームなドラマだが、ルーカスが憧れる娼婦のコリー(シャロン・ファレル)や、黒人のネッド(ルパート・クロス)に対する差別の様子が描き込まれていたりもする。つまり、ルーカス少年の目から見た大人の世界の汚さや醜さが映し出されていくのだ。


 マックィーンとクロス(珍演)が、泥だらけになって笑い合う、肌の色の違いを茶化したシーンは、シドニー・ポラックの『インディアン狩り』(68)にも似たようなシーンがあった。


 そして、ラスト近くで、4日間の冒険の旅から帰ったルーカスが、泣きながら祖父(ウィル・ギア)に抱きつくシーンが映る。と、そこに大人になったルーカスの声(バージェス・メレディス)で、こんなナレーションが入る。


 「その時、私には祖父のシェービングクリームと嗅ぎたばこと、それからちょっとウイスキーのにおいがした」と。


 これは、ルーカス少年が4日間の“華麗なる週末”を過ごし、大人の世界を垣間見たことで、大人だけが知る物が少し分かるようになった、つまり大人の扉を開けたことを暗示するセリフなのだ。


 そうした少年の通過儀礼に加えて、馬から車へと移り変わる時代の波も描くなど、監督のマーク・ライデルが、過去に郷愁を込めて撮った映画という感じがした。フォスターの「草競馬」など、バンジョーを使ったジョン・ウィリアムズの音楽も印象に残る。


 ミシェル・コンスタンチン、クリフトン・ジェームズ、ダブ・テイラー、チャールズ・タイナー、レイモンド・ギャス、ルー・フリッゼル、ビリー・グリーン・ブッシュ、ルース・ホワイト、ダイアン・ラッド、アレン・アン・マクリー…。ここにも“70年代脇役天国”の人々がいた。