『ユースフル・ゴースト』
『ユースフル・ゴースト』(2026.7.7.オンライン試写)

タイのバンコクでは、粉じん公害が深刻化していた。最愛の妻ナット(ダビカ・ホーン)を呼吸器疾患で亡くしたマーチ(ウィットサルート・ヒンマラート)は、悲嘆に暮れる日々を過ごしていた。
そんな彼のもとにナットの霊が掃除機の姿を借りて舞い戻り、2人は再び愛を確かめ合う。その頃、マーチの母(アパシリ・ニティポン)が経営する工場では、死亡した従業員の霊が機械に取りつき、操業停止を余儀なくされていた。
一族や社会から拒絶されたナットの幽霊は、工場の除霊に協力することで、自分が“役に立つ幽霊(ユースフル・ゴースト)”であることを証明しようとするが…。
タイ発の奇想天外なホラー映画。監督・脚本は、本作が長編デビューとなるタイの新鋭ラッチャプーム・ブンバンチャーチョーク。2025年のカンヌ国際映画祭の批評家週間でグランプリを受賞した。
『殺人ブルドーザー』(74)『ザ・カー』(77)『クリスティーン』(83)など、昔から車に霊が乗り移るホラー映画はあったが、その対象が掃除機とは驚いた。
夫婦が愛を交わす姿が、他人から見ると掃除機としているように見えるというシュールな場面が特におかしかった。
そんな本作は、死後も現世にとどまり夫との愛を深めたというタイの怪談「メー・ナーク・プラカノーン」から着想を得て、コメディ、ロマンス、ホラー、SFなどさまざまな要素を横断しながら、そこに性的マイノリティーへの差別やさまざまな愛の形、記憶と忘却、個人と社会といったテーマを盛り込んでいる。
多少粗雑で不器用な面もあるが、その分、欧米や日本の映画とはひと味違う素朴さを感じさせるところもある。
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