続・映画の王様

映画ライターのブログです

『夢見通りの人々』森崎東

ユージン・ターナー

『夢見通りの人々』(89)(1989.8.12.併映は『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』)

 今日は二本立てはちょっときついかな、と思いながらも、前回の『寅次郎サラダ記念日』(88)の併映『釣りバカ日誌』が思ったよりも面白かったので、頑張って見てみた。

 原作は宮本輝。群像劇が得意な森崎東の監督作ということで、その昔の『女生きてます』シリーズや、『時代屋の女房』(83)のような、世の中の底辺に生きる人々のバイタリティーをわい雑に描きながら、ふと悲しさや切なさを感じさせるという、いわゆる森崎タッチの復活を期待したのだが、もはや、バブルに沸く今の時代では、それらが切実には映らないことに気づかされた。
 
 かつらをつけて頑張った大地康雄、脇役の鑑・汐路章、みんな食っちゃう原田芳雄など、俳優たちに助けられながら、端々に森崎タッチは見られるのだが、東京の下町を描いてきた彼が描く大阪の下町に微妙なズレも感じさせられた。このところの森崎映画には、メジャーに復帰しながら、かつてのパワーが影を潜めた寂しさを覚えてしまう。

【今の一言】山田洋次と森崎東が並んでラインアップされたのは本作が最後となった。以後、寅さんの併映は『釣りバカ日誌』が務めることになる。ところで、山田の映画を好ましく思わない人は、なぜか森崎の映画を持ち上げる傾向がある。2人の微妙な位置関係には、変なたとえだが、チャップリンとキートン、ビートルズとストーンズのようなところがあるのかもしれない。