「BSプレミアムシネマ」『プライベート・ライアン』
『プライベート・ライアン』(98)(1998.9.30. 渋東シネタワー2)

スピルバーグが『シンドラーのリスト』(93)で成功し,『アミスタッド』(97)で失敗した実録路線。
今回は、第二次大戦下のノルマンディー上陸作戦のすさまじい戦闘シーンを冒頭に持ってきて、最新テ クノロジーによる映像と音響を駆使して、われわれ観客を一気に戦場へと送り込む手法を取っている。
この冒頭のすさまじさは、かつての戦争映画にはなかったリアルさで再現され、これだけですでに映画一本見せられた感さえ抱かされるのだが、 実はこれはイントロにすぎない。
本筋は上陸作戦で生き残ったミラー大尉(トム・ハンクス)率いる小隊が、戦場で兄弟を全て失ったライアン(マット・デイモン)という一人の兵士を救出する任務を受けてからの道中記ということになる。
ここで示されるのが、一人の兵士とそれを救出するために再び戦場へと駆り出される小隊の兵士たちの命の重さの違いというテーマだが、スピルバーグはあえて答えを出さず、淡々とした描写の中から、アメリカ軍とドイツ軍のそのどちらもが正義ではない戦場のすさまじい実態をあらわにするだけで、答えは観客に委ねる形を取っているように見える。
ただファーストシーンとラストシーンに登場する生き残った、老いたライアンの描写は 『シンドラーのリスト』の現実の墓参シーン同様、入れなくてもよかったのではと思ったが、それと同時に、極限状態を共に戦った“戦友”という特殊な人間関係における複雑さも感じた。
実際、われわれ戦後世代にとって、彼らの持つ連帯感は不可思議なものに見えるのだが、その半面、死地を共に乗り越えた仲間という意味では、われわれには計り知れない何か重大なものを、彼らが共有していることは分からなくもない。 この映画はそんなことも教えてくれた気がする。








このブログへのコメントはmuragonユーザー限定です。