続・映画の王様

映画ライターのブログです

板東英二の出演映画『父』

ユージン・ターナー

『父』(88)(1990.12.27.)



松竹大船調の新骨頂


 夢ばかり追いかけるチャランポランな父親と、それに振り回される家族を描いた人情コメディ。


 「父」と「母」をモチーフに作文を募集し、それを基に映画を作るという趣旨の下、木下惠介監督が『父』を、木下門下の松山善三監督が『母』を撮って、2本立てで公開された。


 このところ計らずも、日本映画黄金期の作品を続けて再見してしまったものだから、このかつての2人の名匠による小品の最近作を見るのは少々つらいかなとも思ったのだが、 両作とも暗い題材を扱いながらその所々にユーモアをちりばめて、往年の片鱗を感じさせる域にとどまってくれてくれた。


 特に木下惠介の『父』は、主演の板東英二の地とも思えるキャラクターに助けられて、最近、善意の押し売りっぽさが目立っていた木下の諸作の中では最も好感の持てるものに仕上がっていた。


 もともと、木下はその作品内に傑出したユーモアのセンスを持っていたのだから、変に社会派ぶらずにもっとこうした肩の力を抜いた軽い、いかにも松竹大船調といった感じの路線で行ってほしい気もするのだが、年齢的なことを考 えるともうそうそう撮れないだろうし…。これが晩年では少々淋しい思いもする。


 片や、松山善三の『母』は、いかにも身障者にこだわり続けてきた彼らしい作品だという評価も出来ようが、木下ほどの余裕がなく、ラストで多少救われはするもののやはり少々つらいという印象が残ってしまった。この人お得意のメッセージ性を持った泣かせの映画も、もはや時代遅れになってしまったという事なのだろうか。


【今の一言】この映画が木下惠介の遺作となった。