板東英二の出演映画『あ・うん』
『あ・うん』(89)(1989.11.9.日劇東宝)
水田仙吉

やっぱりいい話ですよ
昭和初期の東京・山の手を舞台に2人の男と1人の女が織り成す人間模様を美しい映像で描き出す。原作は向田邦子。
久々に邦画を見た。そして見終わった後、あーやっぱりこの話はいいなあと改めて思った。ただ、テレビドラマ版の完成度の高さやキャスティングの妙が頭に残っている分、この話を2時間弱の映画として描ききるのにはちょっと無理があったという気もした。
ところで『ブラック・レイン』(89)を見た後に宿題として残った“新たな健さん像”だが、過去に降旗康男と組んで作られた『駅 STATION』(81)や『居酒屋兆治』(83)『夜叉』(85)といったひたすら耐える男という固定されたイメージから完全に脱却し得たとは言い難いものの、その昔の「網走番外地」シリーズに見られたようなコミカルな一面を実に久々に見せてくれた点は、待ちに待ったこちらとしては、「健さんはこういう役だって出来るはず」という思いがかなってうれしいものがあった。
また、この映画の降旗の撮り方も何だか市川崑みたいな味があって、お互いにグレート・ワンパターンから一歩前進できたようで、良かったのではないかという気がした。
話は最初に戻るが、 やっぱりこの古き日本人が持っていた、やせ我慢の美しさ、切なさ、今時はやらないプラトニックラブの世界は、戦争の波が押し寄せ始めた決して幸福ではない時代背景にもかかわらず、逆に今の乱れきった世の中でこそ輝きを増すという反作用を生んでいる。
恐らく、向田邦子が死して尚輝いているのはそうした今では失われてしまった世界や家族の姿を一貫して描き続けていたからなのだろう。
健さん以外のキャスティングでは予想に反して板東英二が頑張っていた。元プロ野球選手としてはあちらのチャック・コナーズよりも上を行ったと言ってはちょっと誉め過ぎかな。
それに比べると、久々復帰の富司純子は、健さんとお竜さん久々の共演というメリットもあったが、ドラマ版の吉村実子があまりにもうまかったために、この役に関しては見劣りがしてしまったのは否めない。それにしても、富田靖子は又一段と輝いてきたなあ。
Buddies (1989) Original Trailer [FHD]
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